2015年12月4日・東京文化会館中会議室
今回は駐スイス、駐イタリア特命全権大使などを歴任され、現在、大阪経済大学で客員教授を務めておられる中村雄二氏をお招きし、「ヴェルディをドイツ語で聴くと〜オペラと各国語の話」をテーマに講演をしていただいた。
つい30年ほど前まで、ドイツ語圏ではオペラはドイツ語の翻訳上演が主流であった。イタリア語が、語尾が母音で(子音があっても軽く「r」を巻く程度で)終わるため、アクートも伸びやかに歌えるのに対し、ドイツ語は、母音にはウムラウトが存在し、子音の量が多く、かつ語尾を強い子音で終える必要があるため、どうしても歌唱上制約がかかる。そのため同じ曲であっても聴く側に与える印象が大きく違う。それらを《リゴレット》の「女心の歌」、《イル・トロヴァトーレ》のレチタティーヴォなどをイタリア語とドイツ語の歌詞を対比させつつ、CD音源で聴かせ、出席者にその違いを実感させた。
また、なぜ世界の潮流が「ドラマ重視」の翻訳上演から「音楽重視」の原語上演に推移していったのか。それについて時代背景や各種条件、翻訳上演の利点と問題点、その果たしてきた役割などについての実例を挙げつつ、わかりやすくご説明いただいた。
親しみやすさと音楽性とのせめぎ合いが常に存在する、外国語圏におけるオペラの存在意義と今後の方向性を考えさせられる大変有意義な講演会であった。
(Kohno)
2015年12月07日
講演会「ヴェルディをドイツ語で聴くと〜オペラと各国語の話」
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