2015年05月20日

NPO日本ヴェルディ協会若手歌手支援企画第2回 若手歌手の協演〜ベルカントからヴェルディの人間ドラマへ〜

2015年5月14日(木)にカワイ表参道「パウゼ」で標記の公演が行われました。
第一部開催に先立ち、ヴェルディ協会の大嶋理事が開催の趣旨などをご説明。その後、プログラムには記載のなかった《セヴィリアの理髪師》のフィガロのアリア<俺は町の何でも屋>を歌いながら、司会者の井上雅人が颯爽と登場しました。このコンサート開催にあたって若手歌手陣の先輩格にあたる井上はプロデュース、司会、賛助出演からチラシやプログラムのデザインまで、まさにフィガロのような「何でも屋」として活躍したことをアピールする粋な演出です。
第一部は「ヴェルディ以前の作品より」と銘打って、《セヴィリアの理髪師》から平山莉奈(メソ・ソプラノ)による<今の歌声は>と後藤春馬(バス)による<かげ口はそよ風のように>、《愛の妙薬》から吉田連(テノール)、高品綾野(ソプラノ)、山本悠尋(バリトン)による三重唱<トラン・トラン>と佐藤優子(ソプラノ)、後藤春馬による二重唱<なんという愛情>そして吉田連による<人知れぬ涙>が演奏されました。
ヴェルディに先行するベルカント・オペラ時代(19世紀前半)を代表する作曲家ロッシーニとドニゼッティによる喜劇的作品から、出演者各人の声種の特質を生かした曲が選ばれ、まずは素材の味を生かす色とりどりの洒落たオードブルが供されたという感じです。
そしてメインディッシュとなる第二部では、ヴェルディのオペラの一場面が通しで提供されました。
まずは《リゴレット》第2幕からリゴレットのアリア<悪魔め、鬼め>から幕切れの二重唱<お父様!...いつか思い知らすぞ...>までを、ジルダ:高品、リゴレット:山本、モンテローネ:後藤、門衛:井上で演奏。
次に、《ラ・トラヴィアータ》第3幕より、ヴィオレッタのアリア<さようなら、過ぎ去った日々よ>から二重唱<パリを離れて>を経てフィナーレまでを、ヴィオレッタ:佐藤、アンニーナ:平山、アルフレード:吉田、グランヴィル:後藤、ジェルモン:井上で演奏されました。
アンコールは《ラ・トラヴィアータ》第1幕の<乾杯の歌>を全員で。そして最後は、会場の聴衆も参加して《ナブッコ》の<行け、わが想いよ、黄金の翼にのって>の大合唱で大団円となりました。
若手とはいえ、すでにさまざまなステージで活躍するプロ歌手たちですから、全員が小ぶりの会場では十分すぎるほどの声の響きと的確な技術、そして演技力を発揮してくれました。企画の狙いどおり、前半のベルカントのオペラ・ブッファとの対比が鮮やかで、ヴェルディの音楽の特質、すなわち、メロディーの美しさ、わかりやすさはベルカントの伝統を受け継ぎながらも登場人物の人間的な苦悩を深く抉り出す劇的な強さがよく伝わってくるステージであったと思います。その劇的な表現の大事な要素であるオーケストラ部の動きをピアノで演奏してくれた井上紘奈と黒岩航紀も見事でした。
本来なら大劇場で衣装つき、オーケストラつきで演奏されるべきオペラが、こうしたサロンコンサート形式で演奏されても、ヴェルディ作品から受ける感動を十分に味わうことができるということが実感できる演奏会であったと思います。
裏方を務めた協会関係者を含めてこの企画に関わった皆様に感謝いたします。
                                  (Simon)※
 ※本ブログは一会員である筆者の個人的感想を述べたものであり、
NPO日本ヴェルディ協会の公式見解を表明するものではありません。
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posted by NPO日本ヴェルディ協会 at 00:04| Comment(3) | イベント報告
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