2015年05月29日

ミラノ・スカラ座とヴェルディ

image.jpg 6月12日(日)に大阪市中央公会堂で当協会主催の講演会「青春のジュゼッペ・ヴェルディ」が開催されます。
講師はミラノ・スカラ座で長年ヴィオラ奏者として活躍した寺倉寛さん。

(詳しくは当協会ホームページTOPICS欄をご覧ください:http://www.verdi.or.jp/


そこで、ミラノ・スカラ座の過去の来日公演を振り返ってみました。(スカラ・フィルの公演は入れていません。)

1981年:《シモン・ボッカネグラ》《オテッロ》《ラ・ボエーム》《セヴィリアの理髪師》
<レクイエム(ヴェルディ)><小荘厳ミサ(ロッシーニ)>
1988年:《ナブッコ》《カプレッティとモンテッキ》《トゥーランドット》《ラ・ボエーム》
1995年:《ラ・トラヴィアータ》《ファルスタッフ》《西部の娘》<眠れる森の美女(バレエ公演)>
2000年:《リゴレット》《運命の力》<レクイエム(ヴェルディ)>
2003年:《マクベス》《オテッロ》
2009年:《アイーダ》《ドン・カルロ》
2013年:《リゴレット》《ファルスタッフ》

こうして並べてみると一目瞭然ですが、ヴェルディ作品が入らない年はないばかりか2000年以降はヴェルディ作品しか上演されていません。いかにスカラ座とヴェルディの縁が深いかがわかります。
もちろん、本国ではいろいろな演目が演じられているわけですが、日本に引っ越し公演をするとなるとイタリアのオペラハウスの代表としてイタリア人の作品、とりわけヴェルディ作品が中心の公演となるということでしょうか。
 筆者は上記のほとんどの公演に行っています(1995年だけは海外にいたので行けませんでした。)が、とりわけ印象深いのはやはり1981年の最初の引っ越し公演です。
アッバードとクライバーの指揮、ストレーレル、ゼッフィレッリ、ポンネルのプロダクション、カップッチッリ、ギャウロフ、ドミンゴ、フレーニ、ヴァレンティーニ=テラーニなどの歌手陣、どれをとっても超一流で度肝を抜かれました。そして何よりも合唱団の声の厚み、オケの音色の輝かしさ、舞台美術や衣装の美しさなど、劇場を支える全ての人々によって支えられている圧倒的な総合力の高さに茫然としたものです。
その目くるめくような陶酔の時間が中断する幕間時間は30分以上あったでしょうか。カーテンの向こう側からは、舞台関係者が何やら大声を出しあいながら舞台転換を行っている騒然たる雰囲気が伝わってきます。本国とはサイズも機構も違う慣れない舞台(NHKホールと東京文化会館でした)に戸惑いながら懸命に奮闘する様子が丸わかり。一方で、オケピットの中ではソロパートや難しいパッセージなどを泥縄式で何度も臆面もなく練習している奏者がいます。このあたりのあけっぴろげな感じが何ともイタリア的と感じたものです。
寺倉さんがスカラ座オーケストラに加入されたのは、この1981年の12月とのこと。スカラ座管弦楽団はトスカニーニの時代からイタリア随一のオーケストラとしての演奏活動も行ってきましたが、寺倉さん入団の直後に、マエストロ・アッバードがスカラ・フィルを立ち上げ、交響楽団としての活動も盛んに行われるようになったようです。
最近のスカラは少し小粒になってしまったようですが、アッバード、ムーティの黄金時代に数々の偉大な歌手たちの名演をオケピットの中から見てこられた寺倉さん。どんな話が聴けるのか、とても楽しみです。
                                       (Simon)
posted by NPO日本ヴェルディ協会 at 17:42| Comment(0) | オペラ考

2015年05月20日

<悪魔め、鬼め>考

日本ヴェルディ協会の会報『VERDIANA』第35号が発刊されました。
目次についてはホームページ内の「ヴェルディ関連資料」「VERDIANA(会報)」をご覧ください。
http://www.verdi.or.jp/references/verdiana31_40.html#verdiana35
今回は、その中の拙文《リゴレットあれこれ》の中から、<悪魔め、鬼め>の章を抜粋してご紹介します。
全文にご興味のある方は是非、VERDIANAをご購読ください。
<<<<以下、引用>>>>
2015年2月19日の東京二期会の《リゴレット》は、強烈な印象を残す公演でした。その印象とは、「バッティストーニの《リゴレット》」だったということ。
アンドレア・バッティストーニの指揮は、その若さ迸るようなダイナミックな指揮ぶりとは裏腹に、紡ぎだされる音楽が緻密で老練といってもいいクールな美しさを持っています。今回は特に、歌手の個人技よりもアンサンブルや合唱、オケとのバランスといったトータル・パフォーマンスとしての演奏を楽しむ公演でした。首席客演指揮者として関係を築いてきた東京フィルとの息もぴったり合っていて、隅々に若きマエストロの意志が浸透していることを感じるとともに、何度もこのオペラを聴いてきた者にとっても新鮮に感じるところが随所にみられたのです。
例えば、第二幕のリゴレットのアリア<Cortigiani, vil razza dannata,…(廷臣たちよ、卑怯者で罰当たりな輩よ…)」の前半部で弦が刻む六連符の凄まじい速さ。こんなに速いテンポは聴いたことがありません。歌手の声を聴かすことが主眼の昔の大歌手の時代の録音ではこのアリアのテンポがゆっくりめであったのは当然としても、ムーティのような歌手の専横を許さない指揮者であってもここまで速く演奏することはないでしょう。
しかしながら、こうして超高速の<Cortigiani,…>を聴いてみると、ユーゴーの原作におけるこのトゥリブレ(リゴレット)が悪態をつく場面が持つ「鋭い毒」の要素を、検閲対策のために歌詞としては生ぬるいものにに緩和せざるを得なかったヴェルディが、音楽の上ではその激しい毒の要素を表現しようとした、ということがよくわかってきます。
なにしろ原作のこの場面でトゥリブレは、フランスの貴族の名家の名前を次々に挙げたあとに「貴様らの母親はみんな召使に淫売していたのだ。そこから生まれた貴様らはみんな卑しい庶子(バタール)だ。」と言い放つのです。このセリフが問題とされて『王は愉しむ』は一日で上演禁止になったのです。
バッティストーニが、おそらくこうした背景まで意識して曲作りをしていたことは、前週にイタリア文化会館で行われた講演会における彼の言からもうかがえます。
それにしてもこのテンポを一糸乱れずに演奏してのけた東フィルのヴィルトゥオージティは素晴らしいものだと言えましょう。今年3月に発表されたCNNのiReportで世界のオーケストラ・ランキングでTOP10入りしたのも全く違和感のない評価であると感じられます。
このアリアでは前半の疾走する「怒り」に対して、後半ではテンポが少し緩やかになり「哀願」と悲痛な「嘆き」が歌われます。つまり、緩から急になる伝統的なカヴァティーナ・カバレッタ形式のアリアとは逆です。この後半におけるテンポの絶妙なルバートにおいても、バリトン上江隼人の歌とコルノ・イングレーゼ(イングリッシュ・ホルン)の絡みあい、そしてそれを支えるチェロの六連符がぴたりと息が合っていて見事なものでした。指揮者の力量を見せつけた場面だったと思います。
さて、この<Cortigiani, vil razza dannata,…>というアリア、日本ではよく<悪魔め、鬼め>という題名が使われます。
ところが辞書を引いてみますと「Cortigiani」とは「廷臣」、「vil(vile)」は「卑怯な」、「razza」は「種族」、「dannata」は「地獄に落ちた、呪われた」といった意味。「悪魔」とか「鬼」という意味の言葉はどこにもないのでした。
はて、と思って原作の方をあたってみると、この部分のトゥリブレのセリフは「Courtisans! courtisans! démons! race damnée! (廷臣たちよ!廷臣たちよ!悪魔め!地獄落ちの連中め!」とあり、ちゃんと「démons(悪魔)」という言葉が登場しています。イタリア語の歌詞にするときに「demonio」では強すぎて検閲が危ないとピアーヴェが考えたのか、あるいは曲作りの都合(音節数)でヴェルディが注文をつけたのかわかりませんが原作の「悪魔(démons)」という言葉は「卑しい(vil)」に置き換えられてしまったわけです。
今でこそわが国でも字幕付き原語上演が普通になりましたが、かつては日本語訳詞による上演が行われていました。全音オペラシリーズの楽譜でこの曲につけられた日本語歌詞(堀内敬三訳詞)をみると、「あーくまめ、おにめ、ごくどうめ」となっています。
対訳とは違って実際に曲に載せて歌われる訳詞には音型に合った日本語を選ばなければならない、という制約があります。「ていしんたちよ」では「Cortigiani」という4音節にまったく合いません。おそらく堀内先生は苦心惨憺、フランス語の原作にまであたって「悪魔」という言葉をみつけ「意訳」されたのではないかと思います。
バッティストーニの超高速テンポに触発されて、あらためてユーゴーの原作のセリフにあたってみた結果、有名なアリアの邦題名がイタリア語歌詞とは違うものになっている理由が、おそらくはこうした「訳詞上演」の時代を経たためであるらしい、ということにあらためて気がついた次第です。
                                            (Simon)
                           
posted by NPO日本ヴェルディ協会 at 00:56| Comment(0) | オペラ考

NPO日本ヴェルディ協会若手歌手支援企画第2回 若手歌手の協演〜ベルカントからヴェルディの人間ドラマへ〜

2015年5月14日(木)にカワイ表参道「パウゼ」で標記の公演が行われました。
第一部開催に先立ち、ヴェルディ協会の大嶋理事が開催の趣旨などをご説明。その後、プログラムには記載のなかった《セヴィリアの理髪師》のフィガロのアリア<俺は町の何でも屋>を歌いながら、司会者の井上雅人が颯爽と登場しました。このコンサート開催にあたって若手歌手陣の先輩格にあたる井上はプロデュース、司会、賛助出演からチラシやプログラムのデザインまで、まさにフィガロのような「何でも屋」として活躍したことをアピールする粋な演出です。
第一部は「ヴェルディ以前の作品より」と銘打って、《セヴィリアの理髪師》から平山莉奈(メソ・ソプラノ)による<今の歌声は>と後藤春馬(バス)による<かげ口はそよ風のように>、《愛の妙薬》から吉田連(テノール)、高品綾野(ソプラノ)、山本悠尋(バリトン)による三重唱<トラン・トラン>と佐藤優子(ソプラノ)、後藤春馬による二重唱<なんという愛情>そして吉田連による<人知れぬ涙>が演奏されました。
ヴェルディに先行するベルカント・オペラ時代(19世紀前半)を代表する作曲家ロッシーニとドニゼッティによる喜劇的作品から、出演者各人の声種の特質を生かした曲が選ばれ、まずは素材の味を生かす色とりどりの洒落たオードブルが供されたという感じです。
そしてメインディッシュとなる第二部では、ヴェルディのオペラの一場面が通しで提供されました。
まずは《リゴレット》第2幕からリゴレットのアリア<悪魔め、鬼め>から幕切れの二重唱<お父様!...いつか思い知らすぞ...>までを、ジルダ:高品、リゴレット:山本、モンテローネ:後藤、門衛:井上で演奏。
次に、《ラ・トラヴィアータ》第3幕より、ヴィオレッタのアリア<さようなら、過ぎ去った日々よ>から二重唱<パリを離れて>を経てフィナーレまでを、ヴィオレッタ:佐藤、アンニーナ:平山、アルフレード:吉田、グランヴィル:後藤、ジェルモン:井上で演奏されました。
アンコールは《ラ・トラヴィアータ》第1幕の<乾杯の歌>を全員で。そして最後は、会場の聴衆も参加して《ナブッコ》の<行け、わが想いよ、黄金の翼にのって>の大合唱で大団円となりました。
若手とはいえ、すでにさまざまなステージで活躍するプロ歌手たちですから、全員が小ぶりの会場では十分すぎるほどの声の響きと的確な技術、そして演技力を発揮してくれました。企画の狙いどおり、前半のベルカントのオペラ・ブッファとの対比が鮮やかで、ヴェルディの音楽の特質、すなわち、メロディーの美しさ、わかりやすさはベルカントの伝統を受け継ぎながらも登場人物の人間的な苦悩を深く抉り出す劇的な強さがよく伝わってくるステージであったと思います。その劇的な表現の大事な要素であるオーケストラ部の動きをピアノで演奏してくれた井上紘奈と黒岩航紀も見事でした。
本来なら大劇場で衣装つき、オーケストラつきで演奏されるべきオペラが、こうしたサロンコンサート形式で演奏されても、ヴェルディ作品から受ける感動を十分に味わうことができるということが実感できる演奏会であったと思います。
裏方を務めた協会関係者を含めてこの企画に関わった皆様に感謝いたします。
                                  (Simon)※
 ※本ブログは一会員である筆者の個人的感想を述べたものであり、
NPO日本ヴェルディ協会の公式見解を表明するものではありません。
image.jpgimage.jpgimage.jpgimage.jpg
posted by NPO日本ヴェルディ協会 at 00:04| Comment(0) | イベント報告

2015年05月10日

新国立劇場《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》協会デスク設営のお知らせ

こんにちは。初夏らしいさわやかな気候が続いていますね。

新国立劇場では、今日10日より、新制作の《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》が始まります。美しく洗練された舞台で定評のある、フランスの演出家ヴァンサン・ブッサールによるプロダクションです。(個人的な体験で恐縮ですが、ブッサールの《ドン・ジョヴァンニ》を見たことがありますが、とても洗練された粋なプロダクションでした)。

さて、日本ヴェルディ協会では、ヴェルディのオペラの公演があるときに、新国立劇場のホワイエにデスクを出させていただき、協会の活動のご紹介をしています。
今回の《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》でも、すべての公演日にデスクを出させていただけることになっています。
公演の前後や休憩時間には会員が詰めていますので、ぜひお気軽にお立寄りください。
 
公演情報はこちらです。

http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/150510_003710.html 

posted by NPO日本ヴェルディ協会 at 08:53| Comment(0) | オペラ考

2015年04月27日

日本ヴェルディ協会公式ブログを開始致します。

こんにちは。日本ヴェルディ協会です。
2001年、ヴェルディの没後100年にあたって創設された本協会は、講演会や、「ヴェルディ・マラソン」コンサートなどを通じて、ヴェルディを中心としたイタリア・オペラの魅力を伝える活動をしてまいりました。
 このたび、ホームページの刷新に伴い、ブログを開設いたしました。
 協会が主催する催しのお知らせや、ヴェルディ・オペラの公演情報など、協会の活動に関係する情報を、積極的に発信して行く予定です。

th-ヴェルディ胸像.jpg


ヴェルディ生家.jpg
posted by NPO日本ヴェルディ協会 at 19:42| Comment(1) | オペラ考